
代理~その6~です。
今回は表見代理です。
1.表見代理とは
代理権を有しないものがする代理行為ですが、この無権代理のうち、本人に何らかの関与する事情があるため、相手方を保護すべく本人の利益を犠牲にする規定です。
109条、110条、112条があります。
①代理行為なので相手方としては「契約通りしてほしい」
②一方で本人としては自分のあずかり知らぬところで勝手にされたことに責任とれない
ということになります。
しかしながら、この無権代理について、
③本人に何かしらかの落ち度
があれば本人に責任を取らせ、相手方の信頼を守ることで代理制度そのものの信頼性を維持するのが表見代理の趣旨です。

2.109条
109条は、
①代理権を与える旨表示したけど
②実際には代理権を渡していなかった
ケースです。
例えば、
①Aは土地を所有しているが、最近宅建業者を立ち上げたBのことを宣伝しようと、頼んでもいない土地の管理など土地に関する一切ををBに頼んでいると吹聴している。
②その話を真に受けたCがAはBに土地の売却についても代理権を渡しているものと信じ込んでしまい、Bとの間で話を進めてしまう。
⇒このケースでは本人Aが「Bに頼んでいる」と告白してしまっているため、Cが善意かつ無過失ならば、本人Aは契約通りCに土地を引き渡す必要があります(109条1項本文)。
③また、このケースでは109条1項本文で「責任を負う」、109条但書で「ただし、第三者が・・・知り、・・・過失によってしらなかったときは・・・」とあるため、「本人A」は「相手方C」の悪意または有過失を立証しなければ、土地の引渡しを拒むことができません。
さらに同様のケースで
①Aは土地を所有しているが、最近宅建業者を立ち上げたBのことを宣伝しようと、頼んでもいない土地の管理など土地に関する一切をBに頼んでいると吹聴している。
②その話を真に受けたCがAはBに「車」の売却についても代理権を渡しているものと信じ込んでしまい、Bとの間で話を進めてしまう。
⇒このケースでは本人Aが「Bに頼んでいる」と告白してしまっている内容(土地のことを頼んでいる)と、無権代理人Bの行ったこと(車を売る)に齟齬があり、いわば代理権の範囲を超えています。
ここでは109条2項の規定を使い、「第三者(=相手方)がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り」(本人Aは)責任を負う、とされているため、相手方すなわち第三者は自らの善意無過失を立証しなければ、本人に対して「車」の引渡しは求められません。
次回は110条です。