民法条文研究4:代理(その3:107条、108条)

今日も代理です。(その3)

4.自己契約と双方代理(108条)

本人は、代理人を選ぶとある意味、

「代理人にお任せ」
「代理人の意のままに」

ということで基本、丸投げです。
(まあ、最低限の打ち合わせはしますが)

とはいえ、

1)代理人が勝手に相手方になってしまう
2)代理人が本人や相手方の知らないところで
  他方からも委任をもらって双方の代理人になる

ことを勝手にされては困ります。

1)のケースでは例えば、

 ①高く売りたい売主
 ②安く買いたい買主

 のうち、代理人=買主になってしまうと

 「1円で売買契約締結してきました」
  てことになるわけです。

2)のケースでは 

 ①高く売りたい売主
 ②安く買いたい買主

 のうち、代理人の気持ち次第で、

 「代理人の意のままにどちらかを
  損させてしまうことができる」

 てことになってしまいます。

 こうした売主、買主の相互の利益が両立
 しえない関係を

 【利益相反】

 といって、こうした利益相反になりかねない
 自己契約や双方代理は

 

 「原則として無権代理」

 となり、いったん効力を発生させずに、
 本人による追認、追認拒絶で効果が
 確定することになります。

ただ、この規定には例外があり、

(108条1項但書)

①あらかじめ本人の許諾(自己契約)
②あらかじめ双方の許諾(双方契約)

がある場合や、

利益相反に当たらない、

①単なる義務の履行(お金や物件の引渡しを頼む)
②不動産の登記移転手続きにおける司法書士への委任

については事前の許諾なく

自己契約や双方代理が認められます。

108条2項は利益相反行為について旧民法108条の
趣旨が及ぶとする判例理論を明文化したもので
1項と本質的には同じ内容です。

5.代理人による権限濫用(107条)

代理行為には以下の3点がそろうと本人に効果が

帰属することになります(99条)。

①代理権授与行為(授権行為)
②代理人による相手方への顕名
③代理権の範囲内での代理行為

ただ、ここで問題になるのが、

「代理人が代理権の範囲内で行為をし、
 その対価を相手方から受け取ったのに
 それを本人に渡さずに代理人自身の
 私腹を肥やすために使ってしまった。」

場合に、本人は何も言えないのかという
考えです。

本人としては契約行為を代理人に
お任せはしていますが、

「代理人の私腹を肥やす」

ことまでは頼んでいません。

一方で、相手方とすれば何ら落ち度は
ないわけで、代理人の身勝手で相手方
自身に迷惑がかかるのも納得いきません。

そこで民法107条は、

①原則として代理行為として有効
②例外として相手方が、
 代理人の本心(迷惑行為)を知り、
 または知ることができた時(過失アリ)

の際は無権代理行為として、一応無効と
しておいて、本人の追認もしくは拒絶
で効果を確定させることにしました。

まだまだ代理は続きます。

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