
今回も代理です。(その4)
6.権限の定めのない代理行為(103条)

代理人には通常、委任する行為の内容を委任状に書いて頼みますが、特に委任の内容に定めがない場合は、103条の1号と2号に定めがあります。
①保存行為 103条1号
⇒ 消滅時効にかかりそうな債権を 時効の完成猶予、更新する
家屋の修繕 など
②利用行為 103条2号
⇒ 預かっている現金を普通預金に
預かっている家を人に賃貸 など
③改良行為 103条2号
⇒ 無利息の貸金を有利子に など
7.復代理人
1)復代理人とは
代理人には本来
「自己執行義務」
というものがあります。
本人としては代理人の個性に信頼をおいて代理権を渡しているわけですから、本人のあずかり知らないところで勝手にほかの代理人をこっそり頼んで仕事を丸投げしているとしたら、
本人の代理人に対する信頼
が揺らぎ、世間一般として代理人に頼むことが怖くなってしまいます。
このような代理人制度そのものの信頼を損なうようなことを
「趣旨の没却」
といって、民法がもっとも嫌う事象のひとつです。
したがって、104条1項では復代理人を選任できるケースを明記して勝手に復代理人を選任する事のないように規定しています。

2)法定代理と復代理人(105条)
105条は法定代理人について、復代理人を選任しやすくするとともに、すべてにおいて広範な責任を負うように要請しています(105条前段)。
なお、法定代理人が「やむを得ない事由」で復代理人を選任した場合はその選任および監督についてのみ責任を負うだけでよいとされます。
(105条後段)
法定代理人は法律の規定で代理人になっているので、必ずしも専門的でないことも本人の代理人として行動することが要請されてしまいます。
しかし、自身が代理している本人のためには、より専門性の高い代理人を「代理人の責任」で選任することもできていいのではないでしょうか。
例えば、
未成年の子供が芸能活動するためのエージェント契約を結ぶ
際に、親が代理すればいいのですが、親(法定代理人)が弁護士に交渉を依頼してもいいわけです。
3)復代理人の権限(106条)
①復代理人はあくまで「本人の代理人」です。
(106条1項)
②復代理人を選任しても、代理人の代理権は消えません。
③復代理人の権限は代理人の権限の範囲内です。権限を超えた行為は、無権代理行為になります。
④代理人の代理権が消滅したら
復代理人の権限も消えます。
次回からは無権代理、表見代理です。