民法条文研究4:代理(その5:無権代理)

代理~その5~です。

今回は無権代理です。

1.無権代理とは

代理権を有しないものがする代理行為です。

①代理行為なので相手方としては「契約通りしてほしい」
②一方で本人としては自分のあずかり知らぬところで勝手に

されたことに責任とれないということになります。

113条1項では、

①原則として効力は生じない
②例外として本人が追認⇒最初に遡って有効(116条)
 本人が追認拒絶   ⇒最初から無効

として本人にその無権代理行為について効力を確定させることができる旨規定しています。

この追認または追認拒絶は

1)無権代理人に対して行っても
2)相手方に直接行っても

問題ありません。ただ、1)のケースで本人が無権代理人に対してのみ追認や拒絶を意思表示しただけで、相手方がその事実を知らなければ。本人の追認や拒絶を対抗することはできません(113条2項)。

2.無権代理行為の相手方の保護

【催告権:114条、取消権:115条】

とはいえ、相手方も

①無権代理行為の効果を白黒ハッキリさせてほしい。(114条)
②無権代理とは知らなかった。気持ち悪いから取消す。(115条)

を本人に対して意思表示することで保護を受けられます。
①の催告は
 ⇒相当の期間を定め、
 ⇒追認するかどうかを確答せよと催告
 できるとする規定があります(114条)。

 この催告の期間内に本人からの確答が得られなければ
 【追認拒絶】
 で確定します(114条)。

この催告権は相手方が無権代理行為について知っていても(悪意でも)認められます。

なお、②の取消権の行使は「本人が追認しない間」でかつ「無権代理人であることを知らなかった」場合に限られます。

これは本人が追認すると最初からその代理行為は有効な者として取り扱われるため(116条)、もはや有効で確定した無権代理行為を相手方から取消すというのはワガママでしかないためです。​​

3.無権代理人への責任追及(117条)

代理人として契約をした者が、

①代理権を証明できず、かつ
②本人の追認がない

場合、相手方の選択で「無権代理人」に対して「履行」または「損害賠償の請求」を追求することができます。

これは無権代理人にとっては重い責任でしかも、無権代理人の事情は考慮しない「無権代理人の無過失責任」となります。

無権代理人にとってはあまりに重い責任ですから、相手方にも「無権代理人だったことを知らず、 かつ知ることができなかった」という高いハードルを設け、本人と相手方の利益衡量においてバランスを図っています。

ここで、改正民法では、「過失のある相手方を保護する」規定が新たに追加されました。それは、「無権代理人が自己に代理権がないこと」を知りながらあえて代理行為に及んでしまったケースです(117条2項2号但書)。

このような無権代理人が相手方の無過失を要求するのは悪質な無権代理人が過失のある相手方を凌駕するという逆転現象を避けるために新設されたものですね。

この無権代理人に対する相手方からの責任追及については、無権代理人が制限行為能力者であった場合には適用がありません。

これは制限行為能力者に無過失責任という重い責任を負わせずに済ませるためです。

次回は表見代理です。

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